バイクの運転テクニック

強風時の走行で転倒しないコツ

ニーグリップを徹底し上半身の力を抜くことが基本

バイクに乗っていて強い風に煽られたとき、多くのライダーは恐怖心からハンドルを強く握りしめてしまいがちです。しかし、強風時においてハンドルをガチガチに固定してしまうのは逆効果となる場合が多くあります。横風を受けるとライダーの上半身は帆のように風を受け止めてしまいますが、このとき腕に力が入っていると、風に押された体の動きがそのままハンドルへと伝わってしまい、バイクの挙動を乱す原因になります。風で体が右に押された瞬間にハンドルも右に切れてしまうような状態になり、これがふらつきや車線逸脱の大きな要因となります。

そこで重要になるのが、下半身でバイクをホールドするニーグリップです。普段以上に太ももとくるぶしで車体を強く挟み込み、ライダーとバイクを一体化させることで、風による外乱に対して車体が振られにくくなります。下半身をしっかりと固定できれば、逆に上半身はリラックスさせることができます。腕や肩の力を抜いておくことで、突発的な突風を受けて体が揺すられても、その動きを腕の関節がサスペンションのように吸収し、ハンドルへの悪影響を最小限に抑えることが可能になります。風が強い日こそ、下半身は強く、上半身は柔らかくという基本姿勢を意識することが安全走行への第一歩です。

また、強風に煽られるとどうしてもバランスを崩しそうになりますが、そのような時は上体を少しだけ前傾させて重心を低くすることも有効です。オフロードバイクやアドベンチャータイプのような車高が高いバイクは特に風の影響を受けやすいため、伏せるような姿勢をとることで風を受ける面積を減らし、空気抵抗を減らす工夫をすると多少なりとも安定感が増します。ただし、極端に前傾しすぎて前方確認が疎かにならないよう、視線はしっかりと進行方向の遠くに向けておくことが大切です。

ギアを落として駆動力をかけ続ける

強風の中を走行する際は、使用するギアの選択も安定性を左右する重要な要素となります。一般的にバイクはタイヤが路面を蹴る力が強いほど、車体が起き上がろうとする力が働き安定する傾向にあります。そのため、普段よりも一つ下の低いギアを選択し、エンジンの回転数を少し高めに保って走行することをおすすめします。高いギアで低回転走行をしていると、風に煽られた瞬間にアクセルを開けても加速が鈍く、体勢を立て直すのに時間がかかってしまいますが、低いギアであればスロットルレスポンスが良くなり、トラクションを掛け続けることで車体を安定させやすくなります。

速度に関しては、スピードを出せば出すほどジャイロ効果によってタイヤの回転が安定するように思えますが、強風時にはそれが裏目に出ることもあります。速度が出ている状態で横風を受けて流されると、瞬く間に隣の車線やガードレールへと押しやられてしまい、修正が間に合わなくなるからです。一方で速度が遅すぎてもふらつきやすくなるため、制限速度の範囲内で、かつ突風を受けても自分の技量でコントロールできる控えめな速度を維持することが肝心です。

また、強風時は追い風や向かい風の影響で速度感覚が狂いやすくなります。追い風のときは自分が思っている以上にスピードが出てしまいブレーキの効き始めが遅れることがありますし、向かい風のときは空気抵抗で減速しやすく、後続車に追突されるリスクも考えられます。常にスピードメーターを確認し、風向きによってアクセル開度を調整しながら、一定の速度を保つように心がけてください。特に大型トラックやバスなどの大型車両とすれ違う際や追い抜く際は、風の壁による吸い込み現象や、通過直後の強烈な巻き込み風が発生するため、ハンドルをしっかりと保持して進路を乱されないよう警戒が必要です。

風の通り道となる危険な場所を予測する

風は常に一定の強さで吹いているわけではなく、地形や建造物の影響を受けて突発的に強くなる場所があります。こうした危険なポイントをあらかじめ知っておき、身構えておくことが転倒防止につながります。最も警戒すべき場所の一つがトンネルの出口です。山間部などでトンネルの中を走行している間は無風状態になりますが、出口を抜けた瞬間に強烈な横風に見舞われることがよくあります。トンネルを出る手前では必ず減速し、風が吹いてくる方向を予測しながら、いつでもニーグリップを強められる準備をしておくことが大切です。

また、橋の上や高速道路の高架下なども風を遮るものがないため、横風の影響をモロに受ける場所です。特に海沿いの橋(ベイブリッジなど)や谷間にかかる橋は、吹き下ろしや吹き上げの風が複雑に吹くことがあり、バイクが真横にスライドさせられるほどの力が働くこともあります。こうした場所では、風上側の車線寄りを走ることで、万が一風に流されても車線内に留まれるマージンを確保するというテクニックもありますが、無理は禁物です。あまりにも風が強く、バイクが勝手に車線変更してしまうような状況であれば、最寄りのパーキングエリアや安全な路肩に退避し、風が弱まるのを待つ勇気も必要です。

さらに、ビルの谷間や防音壁の切れ目なども突風が発生しやすいポイントです。都市部の走行であっても油断はできません。風向きを示す吹き流しが設置されている場所では必ずその角度を確認し、吹き流しが真横にたなびいているような場合は危険信号です。常に「次の瞬間に突風が来るかもしれない」という予測運転を行い、風に抗うのではなく、風の息遣いを読みながら慎重にライディングを続けることが、無事に帰宅するための最大の秘訣と言えます。